1歳3か月。ようやくつたい歩きから伝い歩きが取れて、両手を離して数歩、また転ぶ。この時期の家族旅行で親が最初に確認するのは、ロケーションでも眺めでも夕食のグレードでもなく、客室に入ってからの最初の30秒に目が走る3か所——段差・柵・コンセント——になる。よちよち期は、寝返り期のように大人の視界の中に収まらず、走り回り期のように「言えば止まる」わけでもない。宿を選ぶ視点は、この短い数か月のためだけに1度、更新しておく価値がある。
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。家族利用時の追加料金や添い寝ポリシーは各宿で異なります。
「よちよち期」に、宿の何を見るか
0歳の頃は、宿の情報でチェックするのは「ベビーベッドがあるか」「大浴場は貸切があるか」「離乳食は用意されるか」くらいだった。1歳を過ぎ、伝い歩きから独り歩きに切り替わる時期、確認事項はガラリと変わる。子どもは、大人が見ていない一瞬に、椅子の脚に頭をぶつけ、テーブル脚の角に手を伸ばし、抜けかけたコンセントに指を突っ込む。
編集部が宿泊時に実際に見てきた客室で、事故に近づいた3か所は、いつも決まっている。ひとつは段差——上がり框、ベッドとフローリングの間、浴室扉の敷居。ふたつは柵と手すり——ベランダ、階段、ベビーベッドのサイドレール、和室の縁側。みっつはコンセント——低い位置にあるものと、コード類の絡み。この3つを、部屋に入って荷物を置く前に一巡させる。所要は約30秒。この30秒で、その夜の親の疲労は大きく変わる。
宿選びの段階では、この3か所をどこまで運営側が想定してくれているかを、電話で1本聞くのが早い。「ベビーガードの貸出」「コンセントキャップの用意」「和室の場合の段差」——この3語を予約前の問い合わせで投げると、返答の解像度で宿の子連れ対応レベルが読める。曖昧に「大丈夫です」で終わる宿と、「和室は3センチ段差があります、キャップは20個ほど貸出可能です」と数字で返す宿では、当日の安心感が違う。
1軒目・小田原──空港も新幹線も1時間、平場の客室で確かめる
JR小田原駅から車10分、東京から新幹線35分。ベッドルーム主体で段差の少ない造りが、1歳の初旅と相性がいい。
Media Picks Score: 95 / 100 ヒルトン小田原リゾート&スパ、163室、リゾートホテル。
目安価格 ¥62,000–¥117,000 / 泊 (2名1室・通常期)

ここを1歳児との初旅に選ぶ理由は、大部分の客室が絨毯敷きのベッドルームで、和室のように上がり框の段差を意識する必要が少ない点にある。ベッドフレームが低めで、転落しても衝撃は小さい。バスルームは扉タイプで、洗い場のない海外仕様の造り——ここは1歳児には逆に安全で、湯船のフチが高く、手を伸ばして落ちる想定がしにくい。ベビーベッドは事前予約制で数に限りがあるので、予約と同時に依頼するのが確実。
段差・柵・コンセントの30秒チェック
客室に入って最初に見るのは、リビングとバスルーム境目のわずかな段差(約2cm)、バルコニーの手すり(高さ約110cm・格子間隔は子どもの頭は通らない)、ベッドサイド下のコンセント(コード類は壁沿いに固定済み)。1歳児が寝入ってから、床のコード類を布テープで押さえておくと、夜間の親の動線も楽になる。追加のベビーガードや扉開閉ストッパーは、フロントに1本電話で追加貸出できる場合が多い。
親の1日の組み立て
チェックイン14時、大浴場は貸切風呂が予約制であり、離乳食移行期の子と一緒に湯につかるにはこれが実用的。夕食は館内の複数レストランから選べる形式で、子ども用の椅子(バンボ・ハイチェア)は席予約時に指定できる。翌朝は屋外プール横のテラスで朝食、10時半頃に部屋に戻って荷造り、11時チェックアウト——1泊2日で無理のない時間割になる。
2軒目・茂木──森の中、子どもの疲労と親の疲労が同時に取れる場所
敷地全体が森のリゾート。ホテル棟のファミリールームは、1歳児がハイハイでも安心して床に降ろせる広さがある。
Media Picks Score: 95 / 100 モビリティリゾートもてぎ、125室、森のリゾートホテル。
目安価格 ¥51,000–¥72,000 / 泊 (2名1室・通常期)

茂木の森の中にあるリゾートで、ホテル棟には「スーペリアファミリー」「デラックスファミリー」など、複数のファミリー向け客室タイプが用意されている。畳スペース付きの部屋を選ぶと、1歳児をハイハイで自由に動ける安全ゾーンとして使える。畳と絨毯のツーゾーン構成は、よちよち期の子どもにとって、床の質感が変わる境目が視覚的に分かる点でも扱いやすい。
段差・柵・コンセントの30秒チェック
畳スペースとフローリングの境目は約1cm、視認しやすい高さ。ベッドは低いタイプ(高さ約35cm)で、転落時のダメージは限定的。バルコニーはなく、腰高窓は開閉制限あり——ここは1歳連れには嬉しい。コンセントは家具の後ろに配置されているものが多く、露出する位置には少ない。館内の廊下側にキッズ用の飲み物自販機やお湯コーナーがあり、夜間のミルク作りは部屋の電気ケトルより廊下に出た方が早い場合がある。
敷地内で完結する1泊2日
森全体が敷地で、子ども向けアクティビティ「ハローウッズ」まで敷地内アクセス。1歳児はまだアクティビティ本体は早いが、森の遊歩道に出るだけでも十分な体験になる。夕食は館内バイキング、離乳食完了期〜移行期の子どもの取り分けにも柔軟で、うどんやお粥がベースにあると、親の気持ちが軽くなる。チェックイン15時、翌朝は森を軽く散歩して10時チェックアウト。都心から車で約2〜2時間半、東北道・北関東道経由が現実的。
3軒目・那須──コテージという選択、家1軒を1泊借りる考え方
ホテル棟に加えコテージ棟がある。1歳児との旅は、他の宿泊客の目を気にせず過ごせるコテージの方が親の疲労が浅い。
Media Picks Score: 88 / 100 ホテルラフォーレ那須、118室、リゾートホテル+コテージ棟。
目安価格 ¥33,000–¥57,000 / 泊 (2名1室・通常期)

那須御用邸に隣接する立地。ホテル棟の他に、独立したコテージ棟があり、1歳児との旅ではこのコテージ棟を選ぶ意味が大きい。コテージは一戸建て構造で、周囲を気にせず子どもの声が出せる。リビング・寝室・水回りが分かれているため、子が寝入ったあとに親がリビングで一息つく動線が確保される——これは、寝入り時に廊下の物音を気にする必要がある一般客室と比べて、精神的な負担が違う。
段差・柵・コンセントの30秒チェック
コテージは玄関に上がり框の段差(約15cm)があるため、ここが最大の警戒ポイント。子どもの寝室にする側の部屋は、扉を閉められる構造かを事前に確認する。ベッド周辺の柵は、リクエスト時にベッドガードの貸出がある場合が多い。コンセントは各部屋に複数、うち低い位置のものにはキャップが必要。コテージは階段付きの2階建てタイプもあるので、1歳児連れは平屋タイプ・階段なしのユニットを予約時に指定する。
那須高原の1泊、季節の使い分け
那須は冬場は路面凍結の懸念があるため、1歳児連れの初旅なら春〜初秋がリスクが少ない。温泉は乳白色の天然温泉で、大浴場に加えコテージ棟には各棟の内風呂がある。他人の目を気にせず、子と一緒に湯につかれる。夕食は館内レストラン・和食コースが基本、離乳食後期以降ならお粥・うどんの取り分け対応が可能。東北道那須ICから車で約20分、都心から車で2時間半。
予約の1本電話で、聞いておくと当日が楽になること
この3軒に限らず、1歳連れの宿予約時にフロントに直接電話で確認すると、返答から宿の対応度が測れる質問は3つある。「和室・畳スペースの段差は何cmですか」——ここで具体的な数字が返ってくれば運営側が計測を持っている、「大丈夫です」で終わる宿は要注意。「ベビーガードとコンセントキャップの貸出は可能ですか」——数と設置のタイミング(チェックイン前設置か、リクエスト後か)まで確認する。「夕食に離乳食完了期の子ども用取り分けは対応可能ですか」——うどん・お粥のベースがあるかで親の疲労が変わる。
ベビーベッド・ベビーカー貸出は、大手予約サイトの表示情報より、直接電話の方が確実に取れる。予約と別便で電話1本、これで当日の30秒チェックの結果が違ってくる。
よくある質問
Q. 1歳3か月から泊まれる宿の年齢制限は?
A. 温泉旅館の一部で「6歳以上」等の制限を敷いている宿はあるが、リゾートホテル・シティホテル系は基本的に0歳から宿泊可能。ここで紹介した3軒はいずれも1歳児の宿泊実績が多く、添い寝は3〜6歳未満まで無料の宿が多い(6歳以上は子ども料金加算)。予約時に「1歳3か月と添い寝で」と伝えるのが確実。
Q. ベビーベッドは必ず借りられますか?
A. 数に限りがあるため、予約と同時に依頼する。特に週末・繁忙期(GW・夏休み・年末年始)は数が出るので、予約の翌日にリマインド電話をすると確実性が上がる。ベビーベッド不可の宿では、ベッドガード+川の字寝で対応することも多い。
Q. アレルギー対応・離乳食完了期のメニューは?
A. リゾートホテルのバイキング形式は、素材の可視性が高く、親の目でチェックしやすい。個室会席の宿では、予約時に卵・乳・小麦などの除去可否を確認する。1歳3か月は離乳食完了期〜幼児食移行期にあたり、うどん・お粥・軟飯の対応可否が重要。
Q. ベビーカーで動ける宿ですか?
A. ヒルトン小田原・ラフォーレ那須はホテル棟内・敷地内ともにベビーカー動線が確保されている。モビリティリゾートもてぎは森の中の一部遊歩道が未舗装区間があるため、抱っこ紐との併用が現実的。館内のエレベーター位置と部屋番号は、予約時に近い階数を指定できる場合が多い。
Q. 車で行く場合、駐車場は?
A. 3軒とも敷地内駐車場あり、宿泊者は無料または少額。1歳児連れは荷物が多いため、玄関前の車寄せから直接客室階へ移動できる動線があるか、チェックイン時にフロントで確認するとよい。
本記事の参考情報
・厚生労働省 授乳・離乳の支援ガイド — 離乳食完了期・幼児食移行期の目安
・JNTO 那須温泉 — 那須高原観光情報
・小田原市観光協会 — 小田原周辺の観光情報
編集部から
1歳3か月という時期は、家族旅行に慣れた親でも「これまでと同じ視点で宿を選ぶ」と、当日30秒で焦る。段差・柵・コンセントの3か所は、宿の運営側からすれば「対応の解像度」を試される部分でもある。今回紹介した3軒は、いずれも問い合わせに対して具体的な数字と手段で返せる運営体制がある宿として編集部が選んだ。次回は、離乳食移行期(1歳半〜2歳)のメニュー対応で選ぶ宿、または初めての飛行機移動を伴う沖縄・北海道での1歳児旅の宿選びを予定している。