楽しかった旅ほど、最終日の朝に子どもが「帰りたくない」と泣くことがある。5〜8歳くらいの子は、宿そのものより「ここで過ごした時間」に別れを惜しむ。だからこの稿は、宿選びではなく「最終日の朝の段取り」の話をする。チェックアウト時刻に少し融通がきく宿、連泊して中日に何もしない一日をつくれる宿、館内で最後にもう一度遊べる宿。そういう条件をそろえておくと、別れ際の30分が驚くほど穏やかになる。実際にその設計を持つ宿を、本文のなかで3軒だけ挙げる。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

「帰りたくない」は、宿が良かった証拠でもある

家族旅行から帰る朝、玄関先で5歳や7歳の子が急に動かなくなる。荷物はまとめたのに靴を履かない。理由を聞くと「まだ遊びたい」「もう一回お風呂入りたい」と言って、最後は泣く。慌てる気持ちはよく分かる。チェックアウトの時刻は迫っているし、帰りの渋滞も読めない。けれど、ここで一度立ち止まって考えたい。その涙は、旅がうまくいった証拠でもある。つまらなかった宿で「帰りたくない」とは言わない。

5〜8歳という年齢は、時間の感覚が大人と少し違う。「あと10分」と言われても、その10分をどう使えば満足できるのかが自分で組み立てられない。だから、別れ際の段取りは親が用意しておくしかない。前の晩のうちに「明日の朝は、ごはんを食べたら最後にもう一回だけ◯◯して、それで帰ろう」と決めておく。たったこれだけで、当日の朝の交渉がぐっと楽になる。子どもは「終わり」が見えていれば、案外すんなり区切りをつけられる。

段取り1 ── 連泊して、中日に何もしない一日をつくる

最終日に泣く子の多くは、滞在が1泊だったり、毎日どこかへ出かける予定で埋まっていたりする。観光をたくさん詰め込むと、宿は「寝るだけの場所」になり、子どもが宿に愛着を持つ前に発つことになる。逆説的だが、連泊して中日に予定を入れない一日をつくると、最終日の心残りはむしろ減る。中日に宿で思い切り遊んで満足しておくと、最終日の朝は「もう十分遊んだ」という納得が生まれやすいからだ。

連泊を前提にするなら、館内で一日過ごせる宿が向く。たとえばアンダの森 伊豆いっぺき湖(静岡・伊東市、68室)は、約20,000坪の敷地に屋内外のアクティビティがそろう。キッズルーム、ボルダリング、卓球、カラオケ、ミニゴーカート、パターゴルフなどが館内・敷地内に点在し、雨の日でも子どもが退屈しない。中日に外へ出かけなくても一日が成立するので、連泊して「宿で遊ぶ日」をまるごと確保できる。目安価格は1泊2名で¥48,000〜¥72,000(通常期)。森のなかの温泉と、子どもが体を動かせる施設が同居しているのが、この宿の性格を表している。


アンダの森 伊豆いっぺき湖 — 静岡・伊東市 · 館内のキッズスペースとパターゴルフなど屋内外アクティビティ
PHOTO: アンダの森 伊豆いっぺき湖 — 公式サイトを見る →

段取り2 ── チェックアウト時刻に、少しだけ余白を持つ

最終日の朝がいちばん荒れるのは、チェックアウトまでの時間が足りないときだ。子どもを起こし、朝食をとり、荷造りをして、最後にもう一回お風呂や遊び場へ──と思っても、10:00アウトの宿だと、どこかを必ず削ることになる。削られたものを子どもは敏感に察知して、別れ際に粘る。だから、チェックアウト時刻に少しだけ余白のある宿、あるいはレイトチェックアウトのプランを選べる宿だと、朝の動きに無理がなくなる。

連泊のしやすさと館内設備の両方で選ぶなら、エンゼルグランディア越後中里温泉(新潟・湯沢町、329室)が分かりやすい。越後湯沢駅から無料送迎バスで約15分。館内には通年利用できる温水プールがあり、夏には手持ち花火のできるエリアも用意される。プールと温泉が館内で完結するので、最終日の朝に「もう一回だけプール」という締めくくりがつくりやすい。連泊向けの料金設定があるのもこの宿の特徴で、目安価格は1泊2名で¥24,000〜¥48,000(通常期)と、大型ファミリーリゾートのなかでは手が届きやすい帯にある。中日にゆっくりして、最終日の朝に短く遊んでから発つ──そんな段取りに向く一軒だ。


エンゼルグランディア越後中里温泉 — 新潟・湯沢町 · 子ども用の椅子とテーブルを備えたファミリールーム
PHOTO: エンゼルグランディア越後中里温泉 — 公式サイトを見る →

段取り3 ── 最終日の朝に、小さな締めくくりを用意する

満足して帰れる子と、ぐずって帰る子の差は、最後の30分にある。何もしないまま「さあ帰るよ」と荷物を持たせると、子どもは終わりを受け入れられない。逆に、最終日の朝に小さな締めくくりを一つ用意しておくと、区切りがつく。庭や敷地でもう一度だけ遊ぶ時間、フロントでスタッフに「ありがとう」を言って見送ってもらう体験、そして「次はいつ来るか」を具体的に約束すること。この3つは、宿の規模や格に関係なく、親の側で用意できる。

「庭で最後に遊ぶ」を体験として持っている宿なら、あてま高原リゾート ベルナティオ(新潟・十日町市、155室)が挙がる。越後湯沢駅から送迎バスで結ばれ、広大な敷地に温泉、プール、レストランがそろう。宝箱探しやスタンプラリー、ものづくりといった子ども向けプログラムが季節ごとに用意され、自然のなかで体を動かす締めくくりがつくりやすい。目安価格は1泊2名で¥48,000〜¥79,000(通常期)。最終日の朝に敷地を少し歩き、自然のなかで一区切りつけてから発つ──そんな別れ方ができる立地だ。


あてま高原リゾート ベルナティオ — 新潟・十日町市 · 敷地内で自然体験プログラムを楽しむ親子
PHOTO: あてま高原リゾート ベルナティオ — 公式サイトを見る →

「また来る約束」のしかた

別れ際にいちばん効くのは、「また来ようね」という曖昧な言葉ではなく、季節を添えた具体的な約束だ。「次は雪が降ったら来よう」「夏になったら、またあのプールに来よう」。子どもにとって「いつか」は永遠に来ない予定だが、「雪が降ったら」「夏になったら」は、自分の生活のなかで待てる目印になる。連泊して館内で十分に遊び、最終日の朝に小さな締めくくりを置き、季節の約束で送り出す。この一連の流れがそろうと、玄関先の涙はずいぶん減る。

そして、宿のスタッフに見送ってもらう体験も侮れない。フロントで子ども自身に「ありがとう」「また来ます」を言わせると、それが小さな儀式になり、子どもは自分で旅を終えた感覚を持てる。受け身で連れ帰られるのと、自分で区切りをつけて帰るのとでは、別れ際の表情がまったく違う。

よくある質問

Q. 連泊割引のある宿はどう探せばいいですか?

A. 大型のファミリーリゾートは、2泊以上で1泊あたりの料金が下がる連泊プランを設けていることが多いです。本文で挙げたエンゼルグランディア越後中里温泉は1泊2名¥24,000台からの帯があり、連泊を前提にしやすい価格設定です。予約時に「連泊」「2泊以上」のプランを確認すると見つけやすくなります。

Q. レイトチェックアウトは子連れに本当に必要ですか?

A. 最終日の朝に「もう一回プール」「もう一回遊び場」という締めくくりをつくるなら、時刻に余白があるほうが動きやすいです。10:00アウトだと朝食と荷造りで時間が埋まりがちなので、11:00以降にアウトできるプランや、館内で過ごせる設備のある宿を選ぶと、別れ際の慌ただしさが減ります。

Q. 5〜8歳が泣かないために、前の晩にできることは?

A. 「明日の朝は、ごはんを食べたら最後に一回だけ◯◯して帰ろう」と、終わりの形を一緒に決めておくのが効きます。終わりが見えていると、子どもは区切りをつけやすくなります。当日の朝に初めて「もう帰るよ」と告げるより、ずっと穏やかです。

Q. 雨の最終日でも遊べる宿はありますか?

A. 屋内アクティビティがそろう宿なら、天候に左右されにくいです。アンダの森 伊豆いっぺき湖はキッズルームやボルダリング、卓球などの屋内施設が充実しており、雨でも最後にもう一度遊んでから発つことができます。屋内温水プールのある宿も、雨の締めくくりに向きます。

Q. 何歳から泊まれますか?

A. 本文で挙げた3軒はいずれも乳幼児から受け入れる大型ファミリーリゾートで、添い寝や子ども料金の設定があります。具体的な年齢区分や子ども料金は宿によって異なるため、予約前に各公式サイトで確認してください。

本記事の参考情報

伊東観光協会 — 伊豆高原・伊東エリアの観光情報
十日町市観光協会 — 当間高原・十日町エリアの観光情報

編集部から

最終日に泣くのは、その旅がうまくいったからだ。だからその涙を、悪いことだと思わなくていい。必要なのは、別れ際を整える小さな段取りだけ。連泊して中日に何もしない日をつくり、チェックアウト前に最後の遊びを置き、季節の約束で送り出す。宿選びは、そのための舞台を用意する作業にすぎない。次の旅では、最終日の朝に何を一つだけ残しておくか──そこから逆算して宿を選んでみてはどうだろう。

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