寒川神社でお宮参りや七五三を済ませた翌日に1泊する宿として、編集部が一軒だけ選んだのは、秦野市・鶴巻温泉の元湯陣屋です。寒川神社からは直線で約10km、小田急線の鶴巻温泉駅から徒歩4分。全16室すべてに源泉掛け流しの露天風呂が付き、チェックインは15時30分、チェックアウトは11時。祈祷・写真・会食が重なる当日は家に帰って着物を脱ぎ、翌日の午後から湯に入り直す。そういう二日がかりの段取りを、宿の運営の仕組みと照らして整理しました。祖父母の長距離移動と子どもの昼寝を、同じ一泊で受け止められるかどうかが判断の軸になります。
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)。

1. 元湯陣屋 — 神奈川県秦野市・鶴巻温泉
全16室に客室露天風呂、鶴巻温泉駅から徒歩4分。行事の翌日、家族三世代が着替えずに過ごせる一軒。
全16室、庭園に客室が点在する温泉旅館。
目安価格 ¥145,000–¥175,000 / 泊 (2名1室・通常期)
なぜ「当日」ではなく「翌日」に泊まるのか
寒川神社の祈祷受付は午前8時から午後5時まで。朝の着付け、祈祷、境内での写真、会食と続けば、3歳や5歳の子どもは昼寝の時間を失い、祖父母は慣れない正装のまま半日を過ごすことになります。その足で宿に向かうと、着物を脱ぐ場所と畳む場所の確保が先に立ち、湯に入る頃には夕食の時刻が迫る。行事と宿泊を同じ日に重ねないという判断は、ここから出てきます。
当日は家に帰って着物を片付け、子どもをいつもの時刻に寝かせる。翌日の午後、普段着で宿に入る。遠方から来た祖父母は前夜を近くで過ごし、翌日の一泊で移動の疲れを抜いてから帰路につく。元湯陣屋のチェックインは15時30分と遅めの設定で、午前中を荷ほどきと休息に充てる旅程とかみ合います。
テーマの出発点は「着物ケースの客室直送」「大浴場の貸切時間枠」「神社の祈祷時刻に合わせない通常時間の朝食」の三点が揃う宿でした。寒川神社の周辺で、この三点を公式の案内だけで確認できる宿は見当たりません。そこで視点を変え、貸切枠を取らなくても家族だけで入浴できる全室露天風呂付きの宿を選んでいます。残る二点は、後段で確認事項として整理します。
歴史と建築
鶴巻温泉は小田急小田原線の沿線にある、丹沢の麓の温泉地。元湯陣屋の前身は1918年(大正7年)に開業した施設で、公式サイトも「創業以来100年以上」と記しています。一万坪の庭園に16の客室が点在する配置で、各室には源氏物語にちなんだ名が付いています。貴賓室「松風」は、旧黒田家の大磯別邸に明治天皇を迎えるために造られた三間続きの部屋と案内されています。将棋・囲碁のタイトル戦の舞台としても知られ、公式の案内によればこれまでに300を超える対局が行われてきました。
格式のある宿ですが、家族客に向けた手当ても進んでいます。2025年秋には山荘露天風呂とキッズルームを改装し、和室と2ベッドルームを備えた特別和洋室「横笛」「鈴虫」はキッチン付きに改められました。運営する陣屋グループは「ウェルカムベビーのお宿」の認定取得を掲げており、ベビーベッドやバスグッズの貸出も案内されています。

滞在の段取り — 15時30分から翌11時まで
公式サイトに載っている時刻を並べると、翌日泊の一日はこう組めます。
- 15:00〜 キッズルームとキッズパークが利用開始(宿泊者は予約不要、24時まで)
- 15:30 チェックイン。客室の露天風呂は時刻を問わず入浴できる
- 16:00〜 山荘露天風呂内の貸切サウナが利用開始(5歳以下は利用不可)
- 17:30〜 夕食開始。最終の開始時刻は19:00
- 翌5:00〜10:00 キッズルーム再開。内湯・庭園露天風呂は翌10時まで
- 11:00 チェックアウト
要になるのは客室の露天風呂です。大浴場の貸切枠は、取れた時刻に家族全員の体調と機嫌を合わせる必要があります。客室に湯があれば、子どもが昼寝から起きた時刻が入浴の時刻になる。祖父母は先に入り、親は子どもを寝かせてから入る、という順番も家族の中だけで決められます。客室の湯は自家源泉、内湯と貸切の山荘露天風呂「山藤」「山桜」は別の源泉で、泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉。貸切の山荘露天風呂は電話での問い合わせ制です。
夕食は17時30分から始められます。未就学児の空腹と眠気が重なる前に食べ終える時刻設定と言えます。食事場所は食事処のほか個室や客室も用意されており、どこになるかはプランと人数で変わるため、三世代で卓を囲みたい場合は予約時に伝えておくのが確実です。子どもの料金は大人料金を基準に、0〜2歳が施設使用料10%(食事なし)、3〜5歳が30%、6〜9歳が50%、10〜12歳が70%という設定です。

予約前に宿へ確認したい三点
公式サイトの記載だけでは判断できない項目が残ります。予約の問い合わせ時に、次の三点を先に聞いておくと当日の動きが決まります。
- 荷物の事前送付: 館内設備に宅配便の取り扱いは記載されていますが、到着前に送った荷物を客室に入れておいてもらえるかは明記されていません。着物ケースや祖父母の荷物を先送りしたい場合は、受け取りの可否と到着日の指定を確認します。
- 朝食の時刻と場所: 夕食の時刻は公開されている一方、朝食の開始時刻は公式サイトに見当たりません。チェックアウトが11時のため余裕はありますが、子どもの起床時刻に合わせられるかを聞いておくと安心です。
- 客室の位置: 館内にエレベーターはなく、ところどころに階段があります。入口からフロントまではスロープがあり、車椅子の貸出もあります。祖父母やベビーカーが一緒なら、移動の少ない客室を希望として伝えます。
集約レビューが映すこの宿の本質
公開レビューデータを集計すると、元湯陣屋の総合評価は同じエリアの温泉旅館の中でも高い水準にあり、評価の件数も十分に積み上がっています。開業から一世紀を超える宿で、評価が一時的な話題によるものではないことが読み取れます。
一方で、宿の造りから人を選ぶ点もはっきりしています。客室にテレビは置かれておらず、必要な場合はフロントに申し出る方式です。館内は庭園に沿って棟が分かれ、階段での移動が生じます。飲食物の持ち込みは原則として遠慮を求められます。価格帯は神奈川県内の温泉旅館の中でも上の層にあたり、行事の出費が重なる時期に泊まるには、家族の中で予算の合意が要る宿です。
立地と周辺 — 寒川神社からの動き方
寒川神社の最寄りはJR相模線の宮山駅で、神社まで徒歩5分。電車で向かう場合は、相模線で海老名駅に出て小田急小田原線に乗り換え、鶴巻温泉駅で降りれば宿まで徒歩4分です。宿は送迎を基本的に行っていませんが、駅からの距離が短く、荷物を先送りできれば祖父母も歩ける範囲に収まります。車の場合は新東名高速の伊勢原大山ICから12分、東名高速の秦野中井ICから15分。駐車場は無料で予約不要です。
曜日の組み方には注意が要ります。公式の案内では原則として火〜木曜が休館。公開販売価格の集計でも、今後3か月で販売を確認できた日は金・土・日曜にほぼ限られていました。土曜に祈祷を済ませて日曜に泊まる形が組みやすく、日曜泊は土曜泊より¥20,000ほど低い傾向があります。日曜に祈祷をして月曜に泊まる計画は、販売日が少ないため予約画面での確認が先です。
なお、宿の公式サイトはお宮参りの参拝先として、曽屋神社、出雲大社相模分祠、相模国三之宮 比々多神社を近隣の神社に挙げています。祖父母の移動距離を短くしたい家族は、祈祷そのものをこれらの神社で受け、宿での会食と宿泊につなげる組み方も選べます。
こんな家族に
-
向く:
祖父母を含む三世代で行事の翌日をゆっくり過ごしたい家族、入浴の時刻を子どもの昼寝に合わせたい未就学児連れ、電車移動で駅から近い宿を探している家族 -
向かない:
行事の出費を抑えたい時期の宿泊(価格帯が高い)、火〜木曜に泊まりたい旅程(原則休館)、階段の上り下りが難しい家族がいる場合(エレベーターなし)、客室でテレビを見せて過ごしたい家族(常設なし)
具体情報
- 所在地: 神奈川県秦野市鶴巻北2-8-24
- 最寄り駅: 小田急小田原線 鶴巻温泉駅から徒歩 4 分
- 車: 新東名高速 伊勢原大山ICから 12 分 / 東名高速 秦野中井ICから 15 分
- 客室: 全 16 室、すべて源泉掛け流しの露天風呂付き
- チェックイン: 15:30〜 / アウト 〜11:00
- 夕食: 17:30〜(最終開始 19:00)、食事処・個室・客室のいずれか
- 子ども料金: 0〜2歳 10%(食事なし) / 3〜5歳 30% / 6〜9歳 50% / 10〜12歳 70%
- キッズルーム: 宿泊者は 15:00〜24:00、翌 5:00〜10:00(予約不要)
- 休館日: 原則 火〜木曜
- 駐車場: 無料、予約不要
- 開業: 1918年(大正7年)
編集部の評価
公開レビューデータを集計した総合評価と評価件数を土台に、テーマとの適合度を加点しています。加点の中心は、全室の客室露天風呂とキッズルームという設備面。寒川神社の徒歩圏ではなく直線で約10km離れている点は、立地の項目で加点を見送りました。
よくある質問
Q. 何歳から泊まれますか?
A. 公式サイトの料金区分は0歳から設定されています。0〜2歳は食事なしで施設使用料10%、3〜5歳は大人料金の30%です。ベビーベッドやバスグッズの貸出も案内されているため、必要な品は予約時に伝えておきます。乳幼児の温泉入浴については、宿は事前に主治医へ確認するよう案内しています。
Q. 食物アレルギーには対応していますか?
A. 宿は、できる限り希望に沿って対応すると案内しており、食物アレルギーに関する専用の説明ページも公式サイトに用意されています。会席料理は品数が多いため、原因食材と症状の程度を予約の段階で伝え、子ども用の料理の内容もあわせて確認しておくと当日の食卓が落ち着きます。
Q. ベビーカーや車椅子で館内を移動できますか?
A. 入口からフロントまではスロープがありますが、館内にエレベーターはなく、ところどころに階段があります。車椅子の貸出はあり、移動の少ない客室を提案してもらえるとのこと。祖父母の足腰に不安がある場合は、予約時に客室の位置を相談するのが前提になります。
Q. 駐車場はありますか?
A. 無料の駐車場があり、予約は不要です。宿泊者は電気自動車用の充電器も無料で利用できます。行事の翌日は荷物が増えがちなので、祖父母だけ電車、親子は車という分かれ方も組めます。鶴巻温泉駅からは徒歩4分で、宿による送迎は基本的にありません。
Q. 七五三の時期はいつ頃までに予約すべきですか?
A. 客室は16室で、原則として火〜木曜は休館です。10月から11月の週末は、七五三に加えて紅葉の時期とも重なります。祈祷の日取りが決まった段階で、翌日の宿も同時に押さえる進め方が安全です。キャンセル料の発生時期は人数と日数で変わるため、公式のキャンセル規定を先に読んでおきます。
本記事の参考情報
・鶴巻温泉 元湯陣屋 公式サイト — 客室、温泉、館内施設、よくある質問、アクセス
・寒川神社 公式サイト — 祈祷の受付時間、交通案内
・Wikipedia: 鶴巻温泉 — 温泉地の歴史と地理の背景
編集部から
行事の当日に泊まるか、翌日に泊まるか。違いは一日ですが、着物を脱いだあとの体で宿に入れるかどうかで、同じ宿でも過ごし方が変わります。元湯陣屋は、客室の湯とキッズルームによって「時刻を家族で決められる」ことが強みの一軒です。そのぶん価格は高く、休館日も多い。荷物の先送りと朝食の時刻という二つの確認が済んで、はじめて段取りが固まります。祖父母の移動、子どもの昼寝、親の着付け疲れ。三つのうち、どれをいちばん軽くしたい一泊でしょうか。


